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保険治療のクリーニングはなぜ回数がかかるのか?

「歯のクリーニングをしたい」と思って歯科医院を訪れたのに、「今日は検査だけ」「次回から少しずつ歯石取り」と、なかなか一度で終わらない…。そう感じたことはありませんか?

実は、保険で行う「歯のクリーニング」には明確なルールと医療的背景があります。本記事では、「なぜクリーニングに複数回かかるのか?」を、医療制度と病気の仕組みの両面からわかりやすく解説します。

保険治療の対象は“病気”であること

まず知っておいていただきたいのは、「歯のクリーニング」は本来、健康保険の対象外であるという点です。保険診療とは、基本的に“病気を治すこと”を目的とした医療行為に適用される制度です。よって、虫歯や歯周病といった「病名」があることが前提になります。

では、なぜ歯石除去や歯のクリーニングが保険で受けられるのでしょうか?
それは「歯周病治療」の一環として必要な手技だからです。つまり、歯石除去は“歯周病を治療するため”に行う処置であり、単なる予防目的の清掃とは異なります。

保険診療には“治療の手順”が定められている

歯周病の治療を保険で行うためには、明確な診断プロセスを踏まなければなりません。

  1. 治療』をおこなうためには『病名』を確定させる必要があり
  2. 病名』を確定するには『診断』をする必要があり
  3. 診断』をするには『検査』が必要になります
  4. また『病気』の治療は治るまでの経過観察が必要です

このようなステップが、保険診療には義務づけられています。
とくに歯周病治療では、初診時に歯周ポケット検査やレントゲン、口腔内写真などを行い、病状の評価と記録を行います。そして、必要に応じて複数回に分けて歯石除去やブラッシング指導を実施します。

重要なのは、歯周病には“完治”という概念がないという点です。生活習慣病の一種であるため、定期的な評価とメンテナンスが必要です。いわゆる「定期健診」は、厳密には“定期的な病状の安定確認”であり、医療保険上は治療行為に該当します。

歯周病=生活習慣病。治療の本質は“習慣の改善”

歯周病は、糖尿病や高血圧と同様に“生活習慣病”です。そのため、「歯石を取って終わり」ではなく、毎日の歯みがきや生活習慣の見直しが不可欠です。

この点をわかりやすくするために、歯周病治療を“ダイエット”に例えてみましょう。

  • 歯みがき習慣 = 食事の節制 日々の運動
  • 歯科医院でのクリーニング ブラッシング指導= パーソナルジムでの運動や指導

つまり、月に1~2回パーソナルジムに通っても、自宅では暴飲暴食していたり運動を全くしていなければ、理想の体型にはなれませんよね?
歯科医院でも同様で、いくらプロが歯石を取っても、ご自身の歯みがきが不十分であれば、また歯周病は進行してしまいます。

そのため、歯科医院では“歯石除去”以上に、“ブラッシング指導”や“生活習慣の見直し”に重点を置いています。これらは一度で終わるものではなく、患者さんごとに状態を確認しながら、数回に分けて丁寧に進めていく必要があります。

だからこそ複数回の通院が必要になる

治療の効果を確認し、歯周病の進行を防ぐためには、1回で終わらせることはできません。

・状態の記録(検査)
・リスク評価
・清掃とブラッシング指導
・経過観察(数週間後の再評価)

このサイクルを、一定期間かけて行うことで、はじめて“病気としての歯周病”をコントロールすることができます。

また、重症な歯周病の場合には、外科的処置(フラップ手術)や再評価を要することもあり、より長期的な治療が必要になるケースもあります。

まとめ:治療に回数がかかるのは「意味がある」から

「なんで一度で終わらないの?」という疑問には、「病気として正しく治すため」という明確な理由があります。

保険診療のクリーニングは、単なる美容や予防目的の清掃ではなく、「歯周病治療」の中で必要な医療行為です。そして、生活習慣の改善と定期的なフォローを通じて、長期的にお口の健康を守っていくのが本来の目的です。

あなたの大切な歯と歯茎を守るために。
ぜひ、回数を重ねる意味を知ったうえで、歯科医院での治療に前向きに取り組んでみてください。

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