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歯の根っこに膿がたまる「根尖性歯周炎」とは?症状・原因・治療を歯科医が解説
「噛むと歯が痛い」「歯ぐきに小さなできものができて、膿が出る」
こうした症状の背景にあることが多いのが、歯の根の先の炎症です。当院のAI相談でも、「根っこに膿がたまっていると言われた」というご相談は少なくありません。
この記事では、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)の症状・原因・治療の流れを、歯科医の立場から分かりやすく解説します。
まず結論:自然に治ることは少なく、早めの受診が大切です
歯の根の先に膿がたまるのは、多くの場合、虫歯や過去に治療した歯の内部で細菌が増え、根の先に炎症が起きているサインです(根尖性歯周炎)。
この炎症は、自然に治ることは少なく、放置すると炎症が広がってしまうこともあります。「痛くないから大丈夫」とは言い切れない病気ですので、まずは状態を正しく把握することが大切です。
決して珍しい病気ではなく、世界各国の研究をまとめた報告では、成人の約52%が少なくとも1本、根尖性歯周炎のある歯を持っているとされています(Tibúrcio-Machadoら、2021年、114研究・約3.5万人対象)※1。
こんな症状はサインかもしれません
根尖性歯周炎では、次のような症状が現れることがあります。
- 噛んだときの痛みや違和感(歯が浮いたような感じがすることも)
- 歯ぐきの腫れ
- 歯ぐきの小さなできもの(膿の出口ができ、膿が出てくることがあります)
一方で、自覚症状がほとんどないまま、レントゲン検査で見つかることもあります。「痛みがない=問題がない」とは限らないのが、この病気の難しいところです。
なぜ起きるのですか?
主な原因は、歯の内部での細菌の増加です。
- 深い虫歯が進行し、歯の神経(歯髄)まで細菌が達した場合
- 過去に神経の治療(根管治療)を受けた歯の内部で、細菌が再び増えた場合
細菌が根の管(根管)を通って根の先まで広がると、根の先のまわりの組織に炎症が起き、膿がたまっていきます。
無症状でも「状態を把握しておく」ことが大切です
ここは、院長として特にお伝えしたい点です。
根尖性歯周炎が見つかっても、症状がなく、すぐに治療を始めないケースもあります。その場合に大切なのは、医院側と患者さんご本人の両方が「その歯に炎症がある」という状態をきちんと把握しておくことです。
状態を共有できていれば、痛みや腫れなどの症状が出たときに、迷わずすぐに治療へ移ることができます。逆に、知らないまま放置してしまうと、症状が強くなってから慌てることになりかねません。
実際、治療済みの歯に残った病変を治療せずに経過を見た研究では、4年以上の追跡で約半数(51.5%)の病変が悪化していたと報告されています(Tsesisら、2013年)※5。「様子を見る」場合でも、それは「知ったうえで見守る」ことが前提なのです。
「治療するかどうか」だけでなく「状態を知っておくかどうか」が、その後の経過を大きく左右します。検診やレントゲンで指摘を受けた場合は、その場で説明を聞いておくことをおすすめします。
治療の基本は根管治療です
治療は、根管治療(歯の内部を清掃・消毒する治療)が基本です。根管の中の細菌や汚れを取り除き、内部を消毒して密封することで、根の先の炎症の原因を取り除きます。
初めての治療と、再治療では成功率が異なります
根管治療の成功率は、歯の状態によって大きく異なります。一般に、初めて神経を取る治療(抜髄)から始める場合と、過去に根管治療を受けた歯を再び治療する場合(再治療)とでは、成功の確率は大きく違います。
数字で見ると、初めての根管治療全体の成功率は、厳密な基準(病変が完全に消失)で約82%、緩やかな基準(病変が縮小)では約93%と報告されています(Burnsら、2022年、42研究のメタアナリシス)※2。中でも、治療前の時点で根の先に病変(レントゲンの影)がない歯では成功率が96%を超えた一方、神経が死んで病変がある歯では86%だったという長期追跡研究もあります(Sjögrenら、1990年)※3。つまり、病変ができる前の早い段階で治療を始めるほど、結果が良いのです。
一方、再治療の成功率は約77%(Ngら、2008年、17研究のメタアナリシス)※4。再治療では、以前の詰め物を外す必要があるうえ、根管の形が複雑になっていたり、細菌が奥深くまで入り込んでいたりすることがあり、難易度が上がります。「一度治療した歯だから安心」ではなく、再治療こそ精密な処置が求められるのです。
根管治療で治らない場合は、外科的な対応も
根管治療を行っても炎症が治まらない場合や、根管の形などの理由で内部からの治療が難しい場合は、根尖切除術といった外科的な処置が必要になることもあります。これは、歯ぐき側からアプローチして、根の先の炎症部分と根の先端を取り除く処置です。
なお、この外科処置の成績は技術の進歩で大きく変わりました。メタアナリシスでは、従来法の成功率が約59%だったのに対し、マイクロスコープなどを用いる現代の顕微鏡下手術(マイクロサージェリー)では約94%と報告されています(Setzerら、2010年)※6。拡大視野と精密な器具・材料の進歩が、成績を押し上げているのです。
根尖切除術の流れ

当院では、患者さんに図を使いながら、次のような流れで説明しています。
- 歯ぐきを切開して開き(剥離)、根の先にある病変(歯根嚢胞などの炎症部分)を摘出する
- 炎症の原因となっている歯根の先端部を切除する
- 根の先端部を充填して密封し、歯ぐきを縫合する
- その後は、時間をかけて骨が再生していく経過を観察する
術中・術後に知っておいてほしいこと
外科的な処置のため、当院では事前に次のような点もあわせてご説明しています。
- 術中、麻酔をかけた部位そのものを摘出・切除する関係で、途中で麻酔の効きが弱まり、痛みを感じることがあります
- 処置する場所をしっかり確保するため、口唇をかなり引っ張ることがあります
- 術後に痛みが出ることがあります。お薬は抗生物質(3日分)と鎮痛薬をお渡ししますが、抗生物質は痛くても痛くなくても、必ず飲みきってください
- 出血は、唾液と混ざると量が多く出ているように感じます。就寝時は血液の混じった唾液で寝具が汚れることがあるため、タオルを敷いて寝ることをおすすめしています
- 血圧が上がると出血量が増えるため、当日は激しい運動・長風呂・飲酒を控えてください
- 喫煙により血流の機能が低下すると、傷口の回復が遅くなります。また、縫合の結び目が口唇の裏側に当たる部位では、高確率で口内炎になります
- 歯ぐきの炎症により縫合がとれることがありますが、傷口が完全に開いていなければ問題ありません
それでも保存が難しい状態では、抜歯が選択肢になることもあります。どの方法が適しているかは、レントゲンや検査で状態を確認したうえで判断します。
当院ではマイクロスコープを使った精密な根管治療を行っています
根管はとても細く、枝分かれも多いため、肉眼だけでは内部の状態を正確に把握するのが難しい治療です。
当院では、歯科用マイクロスコープ(顕微鏡)を導入しており、肉眼では見えにくい部分まで拡大して確認しながら、根管治療など精密さが求められる治療を行っています。たとえば上の奥歯では、肉眼では見つけにくい細い根管(MB2)が、マイクロスコープを使うことで格段に見つけやすくなることが研究で示されています※7。特に再治療のように難易度の高いケースでは、拡大して「見える」ことが治療の確実さにつながります。
マイクロスコープを使った根管治療については、こちらの記事でも詳しく紹介しています。
受診の目安
次のような場合は、早めの受診をおすすめします。
- 噛むと痛い、歯が浮いた感じが続く
- 歯ぐきが腫れている、できものから膿が出る
- 治療済みの歯のあたりに違和感がある
- 検診で「根の先に影がある」「膿がたまっている」と言われた
痛みや腫れが強い場合は、我慢せず早めにご連絡ください。
よくある質問
Q. 痛みがなければ、治療しなくてもいいですか?
A. 症状がなければ経過観察になることもありますが、「状態を把握しておくこと」が前提です。炎症があることを医院と共有し、症状が出たらすぐ治療に移れるようにしておくことが大切です。自己判断で放置せず、まずは状態の確認をおすすめします。
Q. 以前に神経の治療をした歯でも、また炎症が起きますか?
A. 起きることがあります。治療済みの歯の内部で細菌が再び増えると、根の先に炎症が再発する場合があります。再治療は初回の治療より難易度が高く、成功率も異なるため、精密な検査と処置が大切です。
Q. 治療には何回くらい通いますか?
A. 根管の状態や炎症の広がりによって変わるため、一概には言えません。検査のうえで、治療の流れと回数の目安をご説明します。
まとめ
- 根尖性歯周炎は、歯の内部で細菌が増え、根の先に炎症や膿がたまる病気です
- 噛むと痛い、歯ぐきの腫れ・できものがサインですが、無症状でレントゲンで見つかることもあります
- 自然に治ることは少なく、放置すると炎症が広がることもあります
- すぐに治療しない場合も、医院と患者さん本人が状態を把握しておくことが大切です
- 治療は根管治療が基本。成功率は初回治療と再治療で大きく異なり、治らない場合は根尖切除術などの外科的対応が必要になることもあります
「根っこに膿があると言われた」「治療した歯がまた痛む気がする」と気になった方は、お気軽にご相談ください。このページ右下のAI相談からも、24時間ご質問いただけます。
参考文献
※1 Tibúrcio-Machado CS, et al. The global prevalence of apical periodontitis: a systematic review and meta-analysis. International Endodontic Journal. 2021;54:712–735. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33378579/
※2 Burns LE, et al. Outcomes of primary root canal therapy: an updated systematic review of longitudinal clinical studies published between 2003 and 2020. International Endodontic Journal. 2022;55:714–731. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35334111/
※3 Sjögren U, et al. Factors affecting the long-term results of endodontic treatment. Journal of Endodontics. 1990;16:498–504. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/2084204/
※4 Ng YL, et al. Outcome of secondary root canal treatment: a systematic review of the literature. International Endodontic Journal. 2008;41:1026–1046. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19133093/
※5 Tsesis I, et al. Outcomes of untreated persistent apical periodontitis in root-filled teeth (longitudinal follow-up of untreated lesions). Journal of Endodontics. 2013;39:1510–1515. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24238438/
※6 Setzer FC, et al. The long-term influence of endodontic microsurgery (meta-analysis comparing traditional root-end surgery and endodontic microsurgery). Journal of Endodontics. 2010;36:1757–1765. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/20951283/
※7 Buhrley LJ, et al. Effect of magnification on locating the MB2 canal in maxillary molars. Journal of Endodontics. 2002;28:324–327. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12043874/
監修:Lily Smile Dental Clinic 院長
※本記事は一般的な情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。症状がある場合は歯科医院を受診してください。